[雑談]東京オリンピックで撮った写真は、IOCの承諾なしではSNSで共有できない

2019年5月13日

昨日から始まった東京オリンピックの公式チケット販売の抽選申込ですが、窓口までに数万人という旧ソ連のスーパーマーケットを彷彿させるような長蛇の列を体感できると話題です。

公式サイトにならぶ長蛇の列

最初はNTT-ATのWebアクセスシェイパあたりを使っているのかなと思いましたが、Queue-itというVirtual waiting roomを使っているような感じです。この辺あたりは処理異常やピークで落ちるといったクレーム回避の苦肉の策でしょうね。

https://queue-it.com/

とはいえ、私も6万人の大行列を耐え抜き、やっと窓口への「入場ボタン」を目の当たりにして、軽い達成感と期待を胸にポチると、気が付けば9万人の行列の最後尾にワープしておりました。なんでしょうこの時空間のゆがみは。最近ブラックホールの周辺の撮影に成功し、相対論の裏付けがまた一つ積み重なり、ああアインシュタインは偉かったという話が出た所で、こんな地球上の重力下においても、タイムマシンの疑似体験が出来るとは思ってもみませんでした。ぐぬぬ・・・

チケットの利用規約に気になる点が・・・

ここからが本題なのですが、今回のチケット販売に伴い転売対策が強化されているなあと思い、利用規約を読んでいたのですが、競技中の撮影に関して気になる点がありました。

東京2020チケット購入・利用規約

33条(撮影)

(中略)

3.チケット保有者は、会場内において、写真、動画を撮影し、音声を録音することができます。また、チケット保有者は、IOCが、これらのコンテンツに係る知的財産権(著作権法第27条および第28条の権利を含みます。)について、チケット保有者もしくはその代理人に対する金銭の支払や、これらの者から別途許諾を要することなく、単独で権利を保有することに同意し、さらにチケット保有者は、これらのコンテンツについて保有する一切の権利(著作権法第27条および第28条の権利を含みます。)をIOCに移転するとともに、その著作者人格権を行使しないことに同意します。

4. IOCは、前項を前提としたうえで、チケット保有者が会場内で撮影・録音したコンテンツを個人的、私的、非営利的かつ非宣伝目的のために利用することができる制限的かつ取消可能な権利を、チケット保有者に対して許諾します。ただし、チケット保有者は、会場内で撮影または録音された動画および音声については、IOCの事前の許可なく、テレビ、ラジオ、インターネット(ソーシャルメディアやライブストリーミングなどを含みます。)その他の電子的なメディア(既に存在するものに限らず将来新たな技術により開発されるものを含みます。)において配信、配布(その他第三者への提供行為を含みます。)することはできません。

これはソフトウェア開発の際の納品物に対する制約事項に記載されることが多いのですが、日本の著作権では原著作権そのものは第三者に移転する事が出来ないため、第3項のような条項を入れて実質的な権利譲渡を行います。

さらに第4項では、個人が撮影・録音したものについては個人的に保存して楽しむ分に関しては、IOCが撮影者に対して利用を許可するが、許可なくインターネットを含むメディアで配信、配布を禁じています。

これを字面通りに読めば

  1. チケットを持った個人が会場内で撮影・録音した写真・動画・音声に関しては、IOCに権利を実質、譲渡する。
  2. 上記のコンテンツは個人利用はOK
  3. SNSなどでのネットでの共有は不可

具体的にはTwitter、Facebook、Instagram、TikTokなどのSNSでの写真・動画共有もNGになると思われます。ニコ生などの動画での中継ももちろんNGでしょう。

過去のオリンピックでの利用規約に関しては確認してないのですが、観客も普通に撮影していたと思うので、家族・友人で回し見して楽しむ個人利用の範囲では問題ないでしょう。そして(おそらく高額を支払って)中継権を得ているメディアの保護としては、営利利用を目的とする場合の制限は妥当でしょう。

ただ最近のネットの利用の傾向からして、個人でのSNSでの共有もNGになるのは心情的には厳しいですね。会場内では撮影禁止のエリアも多く出来るのではとも思いますが、調子にのってアップしているとIOC、JOCや関係者から怒られると思いますのでご注意を。

【2019/5/13 追記】

ねとらぼさんが組織委員会に取材されておられたので参考までに。

五輪会場で撮影した動画はSNS投稿できない? 東京五輪のチケット規約が話題、組織委員会に見解を聞く

ただ、「静止画はOK」といっても、第3項に「会場内において、写真、動画を撮影し、音声を録音することができます。」となっている以上、写真(静止画)についても制約の対象になっているはずなんですけどね。取締りの運用で黙認するといったことなのでしょうか。