大規模RPA導入は、むしろ逆DXなんじゃないか問題

 いちいちリンクは貼りませんが、「RPAを導入して**万時間の工数を削減」といった類のニュースが流れて、RPAはスゴイ!という礼賛記事がIT系のニュースサイトを中心に事例紹介がされています。

 実際の所、IT系の展示会などではRPA関連のブースは大変に盛況で、業務の自動化に向けた意気込みが伝わってきます。RPAの適用範囲というのは、話を聞く限り、主に事務方のPCを利用する業務の自動化が中心となるわけですが、いわゆる汎用機端末の自動化という相談を受けたこともあります。

この話が今までPCソフトでシコシコとこなしていた雑務が、「RPAを導入したお陰で早く帰れるようになった」レベルの話であればまだ救われるのですが、既存の業務基幹系などの、いわゆるレガシーシステムのクライアントでの処理を自動化となると話が大きく変わります。

 昨今のRPAソフトというのは、PC端末の操作を自動化するという意味で、座標であったり、ウィンドウ上のオブジェクトを識別して、入力やクリックを自動的に行うという動きをします。言い換えれば、画面が変わると、それまでに作成した自動化スクリプトの挙動が怪しくなることを意味します。RPAソフト導入後のトラブルの一つとして、動作が安定しないというのがありますが、自由度の高いウィンドウ画面の設定を前提とする以上、やむを得ないところでもあります。

言い換えれば、クリティカルな業務を自動化するとなると、事実上、動作環境を固定しないと安定した動作は見込めないわけで、すなわちクライアント側もホスト側も容易に変更できない、いわゆる「レガシーの塩漬け」問題が発生します。

そこで有名な経済産業省による「2025年の崖」レポートを振り返ってみると、レガシー保守に日本のIT関連のリソースの多くが投入されており、それらを抜本的に革新しないと、近い将来に日の丸IT産業の競争力が失われるよと警告しているわけです。このためにデジタル技術を利用したDXを行い、サービス品質の向上や業務効率のアップを推奨されているのです。

 つまりDXを進めるつもりで、業務の自動化で効率アップとRPA導入を進めて、レガシーの塩漬けが進むと、短期的には効率アップにつながるものの、中長期的にはレガシーで想定されている、決して効率が良くなかったり、業務環境の変化に追従できていない業務フローが固定化されることを意味しています。変革を要求するDXを進めるどころか既存の業務を固定させるという、いわば逆DXを行っている状況が危惧されるわけです。

RPAも道具としてみれば、使いどころが良ければ非常に切れ味の良いナイフになりうるわけですが、業務フローの整理や刷新を伴わない、単純に現業作業の自動化、デジタルレイバーの文脈で導入すると、中長期的には自縄自縛に陥らないか危惧されるところなのではと思う昨今です。